サハさんのこと

2000年11月30日より

  サハさんはバングラディシュ人です。1年ぐらい一緒に仕事をしました。会社に来る前は大手のゼネコンの子会社で働いていて、ゼネコン不況のため子会社が整理されてしまうので雇ってほしいと訪ねてきました。外人というだけでなかなか会ってもらえず、会ってもらえても履歴書をそこに置いていってくださいと言われるだけ。「一生懸命働きます、自分の能力に自信があります。気に入らなかったらいつでも首にしていいです。」とサハさんは言いました。自分の経歴を書いた文書を英語のものと日本語に訳したものと持ってきました。それに自分の出来ること。どのような講習を受けたという終了の証明書。外人は売りこみ方がぜんぜん違うんだなと思いました。今まで会った中途採用の日本人の場合ほとんどの人が履歴書だけを持って来ました。お話をしてみてきちんとした人だったこと、大学を出ていることで働いてもらうことにしました。、バングラディシュで大学を出ているということはある程度のちゃんとした家に育ったということ、もちろんたいへん優秀だということだと思いました。日本の大学みたいにみんながいくわけではないですものね。お父さんはお医者さんだそうです。

  いっしょに働いてみてサハさんの頭の良いことにびっくりしました。教わったことはコンピューターに保存するみたいにどんどん入ってしまいます。以前に見た映画で研究所からロボットが逃げ出して?民家でテレビを見たり、本を読んだりしてインプット、インプットとどんどん記憶してしまう場面を思い出しました。本なんかぱらぱらとすごい勢いでめくるだけでインプット。ロボットがテレビの三ばか大将の真似したりする面白い映画です。私は平凡な頭なので映画名は忘れました。何でもやってみようとする意欲がすごい。どんなことでも自分が生きていく上に必要で、生活の手段になるのです。私達が英語を勉強する場合、仕事に必要ということもありますが多くの人の場合、外国旅行で使えたら便利だとか外人とお話できたら楽しいなとかいう理由ですね。サハさんの場合英語や日本語が出来なかったら仕事がもらえない。生きていけない。自分の生活がかかっているので生半可な気持ちではないのです。はじめて日本に来たときは奥様のほうが先に来ていて日本語が上手だったので、家でも日本語だけで暮らしていたそうです。だから日本語は片仮名、ひらがなだけでなく漢字も読めます。難しいのは解らないけど。(私は日本人だけど読めるけど書けない字とか、わからないのがいっぱいあります。)ちなみにバングラディシュではテレビの映画は字幕が無いので英語がわからないと楽しめないそうです。

  バングラディシュでは大学を卒業しても良い仕事が無く、さらにイスラム教の人口が多くイスラム教の人たちが要職に就いていて、サハさんはヒンズー教ということでさらに仕事に就けないそうです。卒業したら外国へいくひとが多く、彼らのネットワークはすごいものがあります。イギリスのオックスフォードで研究をしている人、アメリカにいる人、カナダにいる人、優秀な人のつながりがあって情報が世界からメールで送られてくるのです。日本人は恵まれているので、普通は外国で暮らさなきゃなんて思わないですね。遊びにいこうとは思うけど。彼らは自分の能力を活かせるところだったら世界中どこでも行こうと思っています。バングラディシュの国もかわいそうですね。大学で優秀な人を育ててもみな世界へ飛び出していってしまうんですから・・・

  日本では就労ビザをもらうのに雇っている会社はその人がどんなに優秀で会社にとって必要であるという書類を毎年出さなければなりません。面倒ですよね。本人にとっては会社が書類を書いてくれなければ日本にいることが出来ないのですから立場がとても不安定です。お相撲さんは永住権がもらえますが一般の人は将来永住権がもらえるかどうかはまったく確証がありません。そのためサハさんはカナダに入国許可の申請をしていました。許可が下り、ちょうど奥さんに待望の子供が出来たのでお子さんが生まれる前にとカナダに行きました。カナダで生まれれば、その子も奥さんも永住権がもらえるそうです。サハさんも何年かカナダに居れば永住権がもらえるそうです。もちろん誰でもカナダに行けるわけではなく優秀な人だけだそうです。

  私も主人も喜んで彼をカナダに送りました。誰だって安心して暮らしたいですよね。日本も優秀な人たちを逃してしまうような法律は早く改正して世界においていかれない国になりたいですよね。サハさんの次に来たサハさん。サハという名前はすごく多いそうです。この人は女性です。やはり大学で機械工学を勉強した秀才です。学費を払ったことが無いそうです。なぜって優秀な人は払わなくても良いからです。お兄さんは東京工業大学へ通う留学生です。みんな優秀なんですね。弟さんだけは中学生ぐらいからあまり勉強しなくなり学費がただじゃなかったのでお父さんがなんでおまえだけお金がかかるのと怒ったそうです。優秀な家系だと怒られることが違いますね。彼女が言うには「日本の学生はぜんぜん勉強しない。だから日本は衰退するとみんな思っている。日本は国民すべてが身の安全も心配することなく、楽しいことがいっぱいでのんびりして、遊んでばかりいる。」アジアの国々にでさえ追い抜かれているという現実に気づかず、うちの子も含め学生は遊んでばかりだし、遊ぶためのお金を稼ぐのに学校をサボってアルバイトとか将来が真っ暗ですね。彼女のお兄さんも学校を卒業したら安定した将来を与えてくれるアメリカやカナダに行ってしまうでしょう。留学生の学費は誰が払ったの・・・日本でしょ。もったいないですね。

  彼女のご主人は言いました。「決して自分の祖国を捨てたわけではない。カナダかアメリカで自分の立場が落ち着いたら、バングラデシュの人のためにインターネットを使って仕事を出したい。インターネットがあればどこに居たって情報はやり取りできる。それが私のやりたいことです。」

 井の中の蛙の私達に新鮮な風を吹き込んでくれたサハさんたちでした。

 

priyo0094.JPG (213526 バイト) カナダ生まれの息子さんです。

日本のお食いぞめの様に初めて食べる記念日があってそのときの写真だそうです。

すごくかわいいですね。

 

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